211

「さすがに、寒いね。車に乗ろう」


「うん」


 車に乗っても、順平兄ちゃんはあたしにキスをした。


 今日はいつもと違うんだ……。

 そう……感じた。


 唇を離すと、順平兄ちゃんは黙って車を走らせた。


 明るくてお喋りな順平兄ちゃんが、急に無口になった。


「ちかちゃん……いい?」


 たった一言だったけど、あたしにもその意味がわかった。


 海沿いの国道、道路脇には小さなホテルが幾つかある。日は沈み暗くなった風景にホテルの外灯だけが道を照らす。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る