第53話

季節は秋。




吹いてくる風は爽やかで、夏の暑さがやわらぎ過ごしやすくなった。




日中は暑いけど、朝と晩は少し肌寒い。




駅前を忙しく歩く人も、長袖を着ている人がほとんどだ。




「ねぇ、成宮君。あれってお城だよね?行ってみようよ……!」




人の流れに視線を向けていた俺に美優は突拍子もなく、いきなり俺の腕を引いてそう言い出す。




「お城って……。」




嫌な予感を感じながら、美優が指を指す方向に視線を向ける。




街中にポツンと立つ、全体的に?ンク色のメルヘンチックなお城。




思った通り、前に拓真が言っていたお城が見えた。




「行きたいの?」




一瞬誘われたのかと思って心臓がドキッと音をたてる。




「うん!何のアトラクションだろうね?」




でも、美優の一言に直ぐに落ち着きを取り戻す。




やっぱり遊園地にあるアトラクションか何かと勘違いしてるんだ。




毎度ドキッとさせてきたり、ヒヤッとさせられたり……。




美優は一瞬に居て、本当に飽きない。

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