第48話

「えっと……スパイ風?」




「………は?スパイ?」




首を傾げつつ、可愛く言ったつもりなのに、お兄ちゃんは怪訝な顔のまま私を見つめる。




不審者を見る眼差しで。




そこまで露骨に嫌そうな顔しなくてもいいのに。




「……お兄……冷たい。」




今日のお兄ちゃんは冷凍庫に入れっぱなしにしてた保冷剤より冷たい。




ドライアイス並みだよ。




冷たすぎて心の中が凍傷しそう。




「あー。わりぃ。驚いただけだし。落ち込むなって。」




お兄?ゃんはそう言いながら、泣きそうになって俯いた私の頭をグシャグシャに撫でる。




「お兄……。」




そのいつも通りのお兄ちゃんの行動にほっと胸を撫で下ろした。




驚いただけだったんだ。




そうだよね。




お兄は本当は優し……。




「あまりにも……美優が……スーツ全然似合わねーから!はははっ。」




……くない。




やっぱり全然優しくない。

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