第62話

「うわぁ…相変わらず、菜々ちゃんばっかり贔屓して。たまには俺のことも甘やかしてよ」



「……気持ち悪いこと言うなら、帰れ」



「冗談だって、そんな怒るなよ…てか颯斗だって店の後輩と飯くらい行くよな?下心があるかないかは別として…相談がある、とか言われたら話くらい聞いてやるだろ?」




まさか、こんなにも自然に…私の知りたかったことを鷺坂さんが颯斗に聞いてくれるとは思わなかった。




思わず顔を上げて向かいに座る彼に視線を送ると、謎のウインクが返ってきて…どうやら彼はただのおバカさんではないのだということが明らかになった瞬間だった。




「……そーいうのは萩花の仕事。俺は後輩に好かれるタイプじゃないから、まず相談相手に選ばれるようなことは無い」



「マジで一回もないの?一回くらいあるだろ?菜々ちゃん以外の女の子と二人で出掛けたことくらいっ、」




バンッ…と、何故か出来上がって半分くらい食べ終わっているお好み焼きをワザと音を立ててひっくり返した颯斗。




その驚きの行動に、鷺坂さんが黙った。

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