両想いの果て③



「……ねぇ、先生。前に、私のこと好きだと言ってくれたではありませんか」

「……あ、あぁ」




 切り出した話題に目を開き、少しだけ目線を逸らした河原先生。



 苦しくて、痛くて。


 抑えきれない心臓に耐えてもらいながら、私も頑張って言葉を継ぐ。




「それ……今も変わっていないなら、お付き合いして欲しいです」



 そう言うと、先生は少しだけ眉間に皺を寄せて唇を噛みしめた。



「ねぇ、両想いでしょ。私、先生のことが大好きです」

「……知っている」





 ゆっくりと……小さく吐き出された言葉。





「でも……駄目だ。両想いから先には進めない」

「………」





 その言葉に、頭を強く殴られたかのような感覚がした。


 両想いなのに付き合えない。





 それなのに、先生は何で……好きだと言ったのだろう。





「………」






 段々と体が震え始め、涙が零れる。


 自分の中に湧き上がる感情が……抑えきれなくなった。




「どうして、先生。どうして、両想いなのに……!」

「両想いだからこそ、一緒には居られない。駄目なんだよ、24歳差は……!」

「駄目じゃない!! 私、河原先生しか愛せない!」

「馬鹿なこと言うな。これからの長い人生、良い人が絶対に見つかる」

「見つからなくていい! 私は、河原先生が良い!!」




 椅子から立ち上がった河原先生は、泣きじゃくる私の顔をハンカチで拭う。

 そして私の腕を引っ張って立ち上がらせ、力強く抱きしめてくれた。



 その腕がまた温かくて、余計に涙が零れる。




「河原先生、好き。どこの誰よりも、先生を愛しています……」

「俺も好きだよ、平澤。お前を愛してる……」




 両想いなのに、交際に踏み出せないもどかしさ。


 好きで、好きでどうしようも無いのに。超えられない24歳差の壁。


 悲しくて、辛くて、苦しくて、涙が止まらない。




「何で、24年も遅く生まれてきてしまったんだろう……」




 そんな、元も子もないことをつい思ってしまう。





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