2



 当時中学生だった私。



 風が強いのに自転車に乗って帰っていると、高校の裏の辺りで自転車ごと溝に落ちた。

 落ちた衝撃で飛ばされた私は右足を骨折し、動けなくて困っていたところ駆けつけてくれた人がいた。


 その人は私を助け、救急車を呼んで中学校に連絡をしてくれた私の恩人。



 後々、中学校の先生が、助けてくれたのは佐倉北高校の河原先生という人だと教えてくれた。



 たまに高校の裏を通ると、タバコを吸っていた恩人。



 恩人のいる高校に行きたい。

 そう思い、今の高校に進学することを決めたんだ。




 入学して河原先生の姿を見た時、やっと会えたって真っ先に思った。


 お礼を言いたいって思ったけれど……その時はまだ怪我のことを引きずっており、話題を切り出す勇気が無かった。


 大体、あの時のこと覚えていないかもしれないし。そう思うと余計に言えなかった。




「河原先生……」




 1年の時から数学を教えてくれていた先生。


 そんな先生の姿を見ていると、いつの間にか私の中で『恩人』から『好きな人』に変化していった。





 その後、2年になり河原先生が担任になった。

 それでもやっぱり怪我のことは切り出すことができなくて。言えなくて。


 ただただ、好きという気持ちばかりを募らせていたのだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る