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 しかし、学校に着いたというのに涙が止まる気配が無い。



 もしかして、私の中にある水分が全部出ていくまで止まらないのでは。何だかそんな気さえしてくる。



 クラスの子たちも心配して駆け寄ってくるし。どうしよう。





「はい、始める……」





 教室に入って来た河原先生。


 教壇に立った先生は私の顔を見てフリーズをした。




「…………」




 河原先生は、フリーズをしたまま何も言わない。


 そんな先生の様子を見た圭司は、軽く舌打ちをする。そして私の腕を引っ張って椅子から立たせ、吐き捨てるような言葉を投げ掛けた。



「俺が菜都を落ち着かせてくる。先生は普通にホームルームでもやっとけば?」

「えっ」



 圭司は先生の返答を聞くことなく、私を引っ張って教室から出て行く。状況が分からないクラスメイトたちは、ただ呆然と私たちの方を見ていた。





「ちょっと圭司、どこ行くの……」

「屋上。誰も居ない方が良いだろ」



 腕を離す気配も無く、小走りで屋上に向かう。



 常に鍵が開いている屋上には、当たり前だけど誰もいなかった。




「……ったく、河原の為に泣くな」

「圭司、ごめん。何故だか涙が止まらなくて」

「どんだけ好きなんだよ、あいつのこと……」



 またタオルで私の顔を拭いてくれる。何故か圭司まで泣きそうな表情をしていて、胸が苦しくなった。



「……何で圭司がそんな顔してるの」

「だって、大事な人が泣いていたら辛いだろ。菜都のこと、1番近くで見ているんだから……。何で河原なんだよマジで」

「………」



 俯き、消えゆく声でそう言う圭司に、返す言葉が見つからない。


 私は自分の意思を無視して流れ落ちる涙に、ただただ従うしか無かった。



「菜都、心配なんだよ。菜都のことが大切だから。辛い思いして欲しく無いんだよ……。見てられねぇよ」



 唇を噛み締めながら目に雫を浮かべている圭司は、そっと私を抱きしめた。



「け、圭司……?」



 突然の出来事に思考が停止する。

 何が起こっているのか、私には全く理解ができなかった。




「菜都のこと、俺なら泣かせないのに」

「圭司………」




 身体も声も、震えている圭司。


 どうすれば良いか全く分からなくて、無言のまま固まっていると、閉めていたはずの屋上出入口の扉が開いた。




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