1番近くで

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「愛理、熱が出たって。風邪かな」

「だな。“何たら”は風邪を引かないって言うけど。“何たら”じゃない証明がされたな」

「それ、愛理怒るよ……」



 愛理が熱を出して学校を休んだある日。私は圭司と2人で登校をしていた。



「そういや菜都さ、得点係になってからどうなの。河原と」



 いつもと同じ、くだらない会話をして笑っていると、ふと圭司が河原先生のことを切り出した。さっきまで笑っていたのに、圭司の表情は真剣そのものだった。



「……うん。まぁ、その……」

「?」



 上手く言葉を出すことができず、少し俯きながら首を捻った。



「うーん、何と言うか……」



 何と言えば良いのか分からない。悩みながら言葉を選び、どうにか言葉を継ぐ。



「えっと、会話ができないっていうか。気まずいっていうか……」

「そりゃ、そうだろな」



 呆れたかのような圭司の声。その声色1つで、心情が読み取れる。


 



「菜都。だから、河原はやめとけって言ってんだろ」

「……それでも好きだから。気まずくて辛いけれど、それすら上回るくらい河原先生が好き」



 そう言いながら、また涙が零れてくる。

 河原先生のことになると心が制御できない私は、客観的に見て恥ずかしい人だ。



「あ~……もう、本当にバカだよな。菜都、あんなオッサンの為に涙なんて流すなよ」



 圭司は鞄からタオルを取り出し、優しく私の顔を拭いてくれた。

 溜息をつきながら、どこか悲しそうな圭司に胸が少し痛む。



「河原先生は、オッサンじゃない……」

「オッサンだよ、あいつ」




 圭司は私の顔を拭いた後、今度は私の頭に手を置いて、優しく撫でてくれていた。





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