第84話

――――…


「かのん、俺の部屋に来るなんてどうしたの?」



「彼女が彼氏の部屋に来て悪いの?」



そう言うとサツキは首を傾げた。



「…そんな事思ってないくせに。まあイイや、いらっしゃい。」



アタシは少し濡れた身体でサツキの部屋に入った。



「雨が降ってたの?」



「うん…少し。」



サツキはタオルをアタシの頭に被せる。

するとサツキの手が止まる。



「…ねえ、泣いてるの?」



「ちが…う、」



「ふうん、じゃあ雨?」



「ちが…、」



サツキの唇がアタシの唇を掠める。



「そろそろかのんが切れてたところ…」



そう言ってサツキは薄く微笑んで深く口づけてきた。




今頃、



英二も彼女と重なっているんだろうか――――。

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