第72話

「まったく相手にされなかった。」



由芽は落ち込んでいた。

その日はアタシと彩香、由芽で飲んでいた。



「あんたまだ五葉先生追いかけてたの!?呆れた。」


彩香は溜息をつく。



「だって好きになったらそう簡単には諦められないもん。あのヒトならアタシを幸せにしてくれそう…」



「経済力がね。」



「ヒドイ、彩香!アタシは純粋に五葉先生が好きなの!ねえ、かのんも何か言ってよ。さっきから黙ってるけど。」



「あ…うん、見込みがないならもう他に…、」



「かのんは英二君諦められたの?」



アタシは彩香の言葉にドキッとする。



「うん、結婚したいヒトが出来たんだって。」




「そっか、じゃあかのんの新しい恋にかんぱ……わっ!?」



「っ!!」



彩香の持っていたグラスが勢いよくアタシのグラスに当たり、それは割れて破片が腕をかすめた。



「かのん!!」



アタシの腕から血が流れた――――。

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