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かなめはステンドグラスの窓に背を向けて、焦げ茶色のニーホールデスクにファイルを開いた。


そして正面に立つ島崎を見上げた。



「何か疑問点はある?」


「疑問点だらけでございますね」


「ま、そうよね」



身元不明で目撃者もなし。


捜索願も出されていない上に、強盗にしては珍しい絞殺。


第一発見者と被害者の接点もなく、聞き込みによる手がかりなし。



「でも敢えて言うなら、索条痕に対して被害者自身の引っ掻き傷が薄いことかしら」


「吉川線でございますね。私もそれは思いました。恐らく被害者が眠っているところに、相当な勢いで首を絞めたのでしょう。抵抗する時間がないほどに…」


「それじゃあ、何の躊躇もなくがむしゃらに殺したってことよね。やっぱりプロの強盗?」


「或いは被害者が相当気を許す人物か…」


「一緒に寝ていたところを殺したって言うの?いくらなんでも首を絞められたら抵抗ぐらいするでしょ」


「しかし被害者の体内から睡眠薬等は発見されておりません」


「だから力のある人物が迷いなく首を絞めたんじゃない?抵抗する暇すら与えないように」


「その方が無理な話でございます。どんな力のある大男でも一瞬で絞殺はできませんよ」


「貴方がさっきそう言ったんじゃない」


「まさか肯定なさるとは思わず…」


「じゃあ貴方の考えは?」




島崎は「失礼致します」と言って、被害者の全身が写った写真のページを開いた。



そして瞬き一つせずその写真をまじまじと観察した。


その目はまるで人の心を読む心理超能力者だ。



更にその後の発言も決まって、超能力者並みの当てずっぽうであることも、かなめには予想がついた。

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