第91話

――――………


ふとリビングの窓に目をやると、小雨が降り始めた。



「天気予報雨って言ってたかな、」


時計はまだ18時30分過ぎで律が帰宅するのには早い時間だった。


そう思っていたら玄関のドアが開く音がする。


え?


律……?



「ただいま、」



「お、おかえりなさい?今日早くない?」



そう言うと律は雨で少し濡れたシャツに手を掛ける。



「はな、話がある。」



ドクン。



律の声にアタシの胸は動揺した。


いつもの彼の声ではない。



そっか……エリー先生言っちゃったんだ。


アタシが思っている事……。



アタシは一瞬俯いてしまっていた顔を上げる。



「うん、アタシもあるの、律に話が。」



そう言ったけど彼の表情は変わらなく、とても冷静だった。



凄いな……



こんな時まで律は熱を感じさせない。



今更、今の自分が滑稽に見えてきた。

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