第78話

「澄田さん、アタシだったら今のドクターという職種から退いても好きなヒトと……生きていきたいと思ってるわ。だって自分の人生を捧げたいと思わせるのよ、リツという人間は。」






――――……


「はな、旅行にでも行く?」



夜、律は帰宅するとそう言った。



「……旅行?」



「そう、俺達って何処かへ出掛ける事ほとんどなかったし。」



どうしてこんな時に?



「……でも論文とか忙しいんでしょ?」



アタシがそう言うと律はアタシを見つめる。



「エリーが言ったの?」



律は今日エリー先生が此処へ来た事を知っている。



「うん、だから旅行とかは別に……」



行かなくていいと言おうとした時、



「俺がはなと行きたいんだけど。ちゃんと付き合ってもらうから。ったく余計な事をエリーは言うんだから、」



そう言いながら律は自分の部屋に入って行った。



アタシは……行く事のないだろうその旅行を何故か夢見てしまった。



そしてそれを頭の中で急いで打ち消した。

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