第66話

すると、律の携帯の着信音が鳴る。



「あ、病院からだ。」


律は席を外す。そして店内を出た。


アタシは軽く溜息をついた。


……聞いてみたかったな、彼の大学時代の事。


いや、今更って感じもあるよね。


そんな事を考えていると店内の通路を小さな男の子が走る。



「あ、キミあぶなっ……、」



咄嗟にそう言って振り向いた時、



戻って来た律が男の子を抱き上げるのが目に入った。



「こら、危ないでしょう?ケガしたいの?」



律はそう言って男の子の頭を撫でた。



アタシは顔をもとに戻す。



……初めて見た、



彼のあんな表情を。

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