君の罠

卯花かなり

君の罠ープロローグー

第1話 君の罠 ープロローグー


ハル君がわたしを好きになる確率


きっとそれは


地球がひっくり返るほどの奇跡


叶わない恋なのに


わたしはまだ そこに溺れている



◇ ◇ ◇



 青山遥アオヤマハル 君。

 城西高校2年3組。

 遥と書いてハルと読む。


 例えば女子生徒10人に「ハル君はカッコいいか」と聞いたら、6人は「カッコいい」と答えるだろう。残りの4人はきっと「カッコいいけどタイプじゃない」と答える。ハル君はそんな男の子だ。


 180センチはないらしいけど、わたしからすると十分に高い身長。中学の時は水泳部だったらしく、細いのに頼りなくは見せない体型。短髪黒髪のヘアスタイルは男子高校生の一般的な髪型だけど、ハル君のそれはどうしてか周りの男の子たちよりも大人っぽくて知的に見える。


 制服を着崩すことはないけれど、学校指定ではない茶色のベルトはさりげなくお洒落で、丸まることのない背中がスタイルの良さを際立たせる。


 最近伸びてきた前髪に隠れがちな、綺麗な弧を描く二重瞼。

 誠実な性格を表すような真っ直ぐに通った鼻筋。

 心地の良い低音を紡ぐ薄い唇。


 ハル君はいつだってカッコいい。


 男子生徒は口を揃えて「あいつは良い奴だ」と言い、ハル君の周りにはいつも男子も女子も集まってくる。きっとハル君の上にはいつも優しいお日様がいる。映画の中の王子様やライブ会場のアイドルみたいにキラキラ輝いているわけじゃないけれど、少しだけ普通の男の子よりも高いところにいつも立っているような男子生徒。

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