第56話

「これ……」




成宮君は恥ずかしそうに微笑んで私にネクタイを差し出してきた。




ネクタイ……?




あ、ネクタイ条約……!




ネクタイを見た私は昨日の約束を思い出す。





「うん! 結ぶね?」




私は、成宮君のネクタイを受け取って、微笑み返した。





ネクタイを成宮君の首もとに引っ掻ける。




何だか……こうしてネクタイを結んでいると、奥さんになったみたい。




きゃー! 奥さんだって!




「……ふふっ」




思わず頬が揺るんじゃう。




「どうかした?」




私を上からじっと見つめてきていた成宮君は、優しい声でそう聞いてくる。

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