第53話

翌朝、優雅に浦崎君が淹れてくれたコーヒーを飲んでいたらチームリーダーの山本さんからの着信音が鳴る。


『彩ざん?やまもどだげどー、』


「山本さん!?どうされたんですか、その声!」


スピーカーにしていたから部屋中に山本さんの超ハスキーボイスが響き渡って吹き出しそうになる。隣に座る浦崎君は完全に吹き出していた。


娘さんの風邪がうつって欠勤する内容だった。


『ほがのスダッフにはれんらぐしだがらー。彩ざんは悪いげど入院棟もおねがいじまーず。』


山本さんの着信を切った後、メールでも良かったんじゃないかと思った。


「凄いヤバい声してたね、山本さん。」


笑いを堪えながら浦崎君は片付けを始める。


「入院棟なんて初めて行くんですけど。どんな雰囲気ですか?」


そう言うと彼はちょっと考える。


「俺も術前訪問くらいしか用がないからよく分からないんだよね。」


……そんなぁ、今から憂鬱だ。

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