第44話

「待って!何処に行くんですか!?」


菜々に腕を掴まれる。

彼女の力だったら簡単に振り払える強さ。


「波久の所、この時間だと早朝カンファレンスが始まってる時間だから。」


小児心臓血管外科は麻酔科よりもカンファレンスが早い事は知っていた。


「俺、もう無理。これ以上波久に振り回されるのは。」


「ダメです!行ってはダメです!」


「菜々?君は自分自身を波久にジャッジされて気分悪くないの?」


俺の言葉に彼女の返答はない。

菜々は波久の何かを知っている?

ただの憶測だけど、頭のいい彼女はきっと話さない。


「……菜々、自分のマンションに帰ってもいいよ。」


「え……、」


そう言うと彼女の掴んでいた手が緩む。

それを確認すると俺は腕を離して階段を降りた。

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