第75話

菜々の頭を撫でた張本人にこんな時間に会うなんて。

思わず菜々への着信を切る。


「お疲れ様です。」


俺を見ると浅くお辞儀をして通り過ぎようとした。

今晩はこの山本って人が宿直なのか。

名札を見逃さずに見た。


「貴方は菜々と同僚の方ですよね?」


そう言うと彼は立ち止まる。少し考えるような表情をする。


「あ……、そうですが、」


そう言って俺の名札を見ようとしたけれど私服だったから彼は少し不思議な表情をしていた。


「すみません、うちの彩とお知り合いですか?」


「彼女に簡単に触れないで欲しいんです。」


そう言うと自分の携帯から着信音が鳴る。

菜々からだと思った。


「……あの、携帯鳴ってますよ?」


「守ってくれますか?さっき言ったこと。」


着信音は少しの間鳴り続けてそして切れる。


彼は困ったような顔をする。だけどすぐ少し微笑む。


「さぁどうでしょうね、彩さんは大事な人ですから。」


……大事な人?


どういう意味?

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