Lovesick 25

第73話

なにあれ。


俺は何を見せられた?


「浦崎先生さっきまで麻酔導入してたのに疲れてないんですかー?」


隣で介助についている笹川さんの全く心配していない声が聞こえる。


「別に……ワイヤー頂戴。」


ワイヤーが通って患者の内頸にカテーテル挿入を終えると、


「今日の先生はご機嫌斜めっぽいですね、早く帰って寝た方が良いですよ。」


「俺だって帰りたいけど論文仕上げないといけないから。」


「先生、いつか死にますよ。」


笹川さんは冗談ぽく言った。


そんなんじゃ死んだりしない。


だけど……あの場面を見せられたら死ぬどころか殺したくなる。冗談だけど。


誰?あのオトコ。

馴れ馴れしく菜々に触れていた。

菜々も全然抵抗しないし、おかしいだろう?

まだあのオトコに何度も頭を下げて……アイツ教祖様?


目の前を片付けの終わった笹川さんが通る。


俺が頭を撫でたら彼女はどんな反応するだろう?


実行してみる。


「!?」


本人は硬直して茹でたタコみたいに顔が真っ赤になった。周りは……発狂のような奇声が飛び交っていた。

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