第66話

こんな仕事してなかったら菜々と会う約束なんて簡単に出来るんだろうな。


休憩時間は論文作成していたり時間がいくらあっても足りない。


宿直明けに朝食の調達に院内のコンビニに寄る。


「眩しいっ、」


窓から太陽の光が射し込む。

一気に頭と身体の回路が朝モードになる。


すると後ろから何か上着の裾を引っ張られる感じがした。


振り向くと、


「菜々、」


彼女は小さく「おはようございます、」と本当に小さな声で目も合わさずにおにぎりを1つ持ってレジに向かう。


彼女にとっては俺に精一杯の挨拶。


あ……、コレはマズイ。

触れたい。


あのサラサラの髪とか俺より体温の高い身体とか香りとか、なんてイカれた事を思い浮かべていると緊急コールが鳴る。


これが現実。

急いでICUに戻る。



菜々、今度はいつ会える?

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