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部活の練習が始まって、私はたくさんの洗濯物を抱えながら、ボールを蹴る浅野先輩を目で追って頬を膨らませた。



フェンスの向こう側では、また複数の女子が浅野先輩に騒いでいる。


それに答えるように、ヘラヘラと笑顔で手を振る姿は、もう毎日のこと。



「みんなー!ウォーミングアップはそこまで!今から外周10周でーす!」



澪先輩が、大きく手を振って部員に呼びかける。


皆が素直に「はい」と返事をする中、唯一浅野先輩だけが唇をとがらせた。



「えー、澪ちゃん、10周ってさすがにキツくね?減らしてよ」



ほら、始まった。


この人、いっつもそう。


辛い練習は嫌がって、女の子に騒がれるようなことだけは本気を出す。


私は、ただでさえ風船みたいにパンパンになった頬袋をますます膨らませて浅野先輩を見た。

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