放課後のひみつ

1


キーンコーンカーンコーン……。


終わりのチャイムが鳴る。ううん、むしろ、始まりの音が。


私、西川梨子(にしかわ りこ)は、一年三組の教室で、チャイムの音と共に自分の席で頭を抱えた。


放課後を告げる音に歓喜しているクラスメイトに、恨めしい視線を送る。


うらやましい……。このまま家に帰れる人たち、みんな。



「こらー、何やってんの、梨子。睨まなーい。てか、怖ーい」



クラスメイトで友達の友理奈(ゆりな)が、私の頭をペシッと軽く叩く。


痛くもないのにそこを擦りながら、私は情けない目を友理奈に移した。



「だって、部活行きたくない……」


「入らなきゃよかったじゃん」


「それは言わないで……」



友理奈の無慈悲な物言いに、再び頭を抱えようとポーズを取りかけると、ひとりの男子が私の机にぶつかった。



「悪い、大丈夫?」


「あっ、だ、大丈夫……です」



至近距離で謝られ、私はビクッと身を退いた。


びっくりした……。近かった。


縮こまってしまった私を見て、友理奈がため息をひとつ。



「よくそれでサッカー部のマネージャーやろうとか思ったよね」



それを説明するには、二ヶ月前の四月に遡らなくてはならない。

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