願う

第239話

* * *






目が覚めたら、何故かベッドの上だった。



昨日は確か脱衣所の床で寝たはずだが、運んでくれるのは叶斗しかいない。



肝心の叶斗はこの部屋にはもういない。



「…ッ」



なんで、涙が出るんだろう。



寂しいから?悲しいから?



『愛してる』……なんて言葉で繋ぎ止めないで欲しいから?



ただ傍にいたい…ちゃんと『私』を愛して欲しい……。



それすらも今はままならない。



けど、これが重いのかもしれない。



出会った頃は、そんな事なかった。



なぜこんなに私を気にかけるのか。



そんな疑問だった。



それが、今はどうだろう。



私がおかしくなったと言われればそうだが、なぜ普通のカップルが思うようなことは出来ないのだろう。



『普通』に憧れたのがいけなかった?



いや……私に普通はいらない。



叶斗もおかしいんだから、さっさと仕事辞めちゃえばいいんだ。



裏の仕事だけ持っていれば、生活できるお金は充分ある。






願っていた『傍にいたい』なんて事は、今後も無理だった。

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