第218話

コンコンとノックがされ、扉の向こうで朱羽が言う。



「本日のお食事置いておきますね」



この部屋に移されてから、私は朱羽に近付けなくなった。



それも、この部屋に朱羽を入れてはくれない。



私はこの部屋からは叶斗と一緒じゃないと出られない。



だけど、一緒に出られるほどの時間をこの部屋で、私の隣で叶斗は過ごしていない。



「朱羽、」



扉の向こうにまで聞こえる声ではない。



でも、体調が悪い今、悪化しないうちに朱羽に薬を持ってきて貰わないと…。



重い足取りで扉まで歩く。



開けずにもう一度名前を呼んでみる。



「…朱羽」



「ここにいます。どうかされましたか?」



「かぜ薬、欲しい」



その言葉に、少し遅れて返事が返ってきた。



「規定量しか与えませんが大丈夫ですか?」



また私のオーバードーズが始まると思ったのかもしれない。



「うん、それで大丈夫だよ」



「かしこまりました、少しお持ちください」



オーバードーズはやらないかもしれないけど、自傷行為は始まりそうで怖い。



今は止めてくれる人がいないかもしれないって言うのに…。

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