現実

第139話

叶斗と過ごして3度目の春が訪れる。



「桜、見に行くか?」



「……ううん、行かない」



「そうか…。なら庭に植えてやるよ、そしたら来年からは毎年窓から見えるだろ?」



私は壮をこの手で殺したはずなのに、上手く生活出来なくなっていた。



少しずつ家でリハビリして、左足を動かせるようになってきたけど、支えがないと上手く歩けない。



そのせいで、時間が2倍以上かかり、叶斗の時間を奪ってる。



「千花、体調は大丈夫か?」



「うん」



「ん。昼は何食いてぇ?外に行きたきゃ連れてって…」



「行かない。外に出たくない。魚以外ならなんでもいい」



叶斗の言葉を遮って否定する。



「わかった。ごめんな」



私に触れて、部屋を出ていった。



相変わらず部屋は片付いていなくて、ぐちゃぐちゃのまま。



朱羽は叶斗の代わりに仕事をしているため、片付けの時間がないし、部屋にもいない。



5月に入れば、また叶斗が仕事に戻る。



その間、叶斗は付きっきりで私の傍にいれる。



嬉しい気持ちがあるのに、心が黒い。



ベッドの上でボーッとしてると、叶斗が声をかけてきた。



「千花、飯届いたけど食うか?」



「…うん、食べる」



叶斗の元へ歩こうと体を動かしたら、静止された。



「動くな。身体に障るだろ」



「大丈夫。叶斗のとこまで歩けるよ」



そう言ったものの、私の元へ歩いてきた。



「1ヶ月近く一緒にいれるんだ、運ばれろ」



「わかった…」



叶斗の言葉に従い、首に手を回して抱きついた。

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