第20話

「千花ー、今日は楽しいことしようと思うんだけど、どー?」



「楽しい、こと?」



「そ、なんだと思う?」



叶斗の目に光がなかった。



何されるの?



考えてるとキィーと扉が開いた。



「朱羽?」



疑問形で朱羽の名前を呼んだ時、グッと鎖を引っ張られた。



「お前の口から出ていい名前じゃねぇんだよ」



さっきの笑ってるような顔から一瞬にして狂気の顔に変わった。



「…ごめっ、なさい」



「コイツの前でお前のこと犯すんだよ」



「な…んで、?」



何でそんなことされないといけないのかわからない。



見世物じゃないでしょ?



「なんでって、お前が誰のものかわからせる為」



「わ、私は叶斗のものじゃん!そんな事しなくても朱羽のとこなんかっ…!?」



ガっと今度は手で口を塞がれた。



「二度も言わせんな」



朱羽の名前を言ってはいけない…。



叶斗は私をどうしたいの?




それから散々犯され、イくところを朱羽に見られ、すごく嫌な気分だった。



だけどそれは最初だけ。



叶斗が薬を飲ませ、私をおかしくした。



「かなっ…叶斗だけ…だからぁっ!?…あっ…っ…ンンっ」



媚薬なのか、なんなのか。



叶斗と、気持ちいいことしか考えられなくなっていた。



そんなグチャグチャな私を見て、叶斗は笑ってた。



笑ってたはずなのに、キスからは寂しい、悲しいってそんな気持ちが伝わってきた。



それは頭がおかしくなった私でも分かるくらいだった。






* * *






目が覚めると朱羽はいなく、隣で叶斗が寝てた。



「…言わないとわかんないよ」



叶斗の頬に手を当てながら独り言のように言う。



優しく頬を撫でる。



「…千花?」



「ごめん、起こしちゃった?」



ぎゅーと抱きしめられた。



「酷くしてごめん…」



それに対して私は何も言わなかった。



「俺…千花のこと大切にしたい」



「うん…私のこと大切にして」



「……本当にごめん」



少しだけいつもの叶斗に戻った気がした。



ちゃんと私を見てくれてる気がした。






* * *






ようやく終わった。



たった1ヶ月。



だけど、私は既に堕ちていた。



叶斗に気付かれないように、悟られないように。



出会う前の恐怖を身体は覚えている。

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