9/28 だから僕は絵を描くことをやめた

突然だが、絵を描きたいと思ったことはあるだろうか、一度は考えたことはあると思う、僕にもあった。


僕の居たネットコミュニティには絵描きとして活動してる人が数多く居て、絵を描いてるところを間近で見たこともある。それを見てると自分も描いてみたいと思うのは普通の事だと、そう思っている。


だが絵描きとして頑張っている人は、これまでたくさんの絵を描いてきた経験のある人だ、そんなすぐ上手い絵がかけるなら苦労なんてしない、そりゃそうだ、最初は誰しも練習から始まる。


画力に関しては練習すれば上手くなって行くだろう。だがどんなものを描くか、どんな風にしたいかなどのおおよそを考え、それを聞いて表していく段階、要は想像力を必要とされる最初の構想の段階、これは僕が持ち合わせていないものである。目の前にあるものを描く模写は出来るのだが、目の前にはないものを想像して描くことは出来ないのだ。


ここで少し昔の話をしよう。とあるコミュニティでガーティックフォンというお絵描き伝言ゲームをやっていた。お題がきて、それに対して絵を描き、それを元に次の人がそれを文章で表現する。しかしあんな短いお題で、絵を描けというのは、想像力のない僕にとってそれは地獄だった。結局そこテンパってなにも描くことが出来ず白紙のまま送ってしまった。それが続いたことで後から参加した人にいろいろと言われた。その影響で今になるまでもうやっていない。


そうだよ、僕に絵を描く才能もないし、努力をする気力もない。白紙でもいいと励ましてくれる人もいるが、そのフォローすら心を苦しめる、あいにく、自分の納得出来ないものを他の人に見せて笑っていられるほど僕の精神は強くない。どうしても心が痛くなる。


文章で気持ちを表現するのはそこそこできる、だからこうやって小説を書いている。だけど絵を描くことは僕にとって辛いことだ。絵を描けないという出来事が、僕には何も出来ないという周りとの劣等感を感じさせるものになってしまっている。だから僕はこれからも絵を描くつもりは無い。だからもう、頼むから頑張ればこれくらい描けるよだなんて僕に言わないで欲しい、自分と同じことが他の人にできるなんて思わないで欲しい、辛く、苦しくなる。


だから僕は、絵を描くことをやめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る