第64話

季節はいつの間にか冬になっていた。



 ここ山田組の屋敷での生活を初めて、ひと月以上が経過した頃。




 床冷えする最中で、布団の中で私を抱き締めながら吐息を立てる男。



 温かいな....なんて悠長な事を考えている早朝の出来事だった。




 月経が訪れて、一週間お預けの性欲満載の変態は、私の身体を労りながらも、甘いキスは疎かにしない。





 吐息を立てながら熟睡する詠斗を横目に、腹痛が襲い、苦痛に蝕まれ唇を噛み締めた。







 何度経験しても慣れない女の子の日ってのは、唯一私が安堵出来る瞬間でもある。




 それは何度も抱かれて、時に中に満たされる精液が受精しなかった事を意味する。






 


 孕ませて跡取り作りを計画しているであろうこの男から逃れたい私は、未だ逃走計画を練っている。





 いつ、どのタイミングで?と考えている余地など与えてはくれないが、頭の片隅には、この男の求愛から逃れる方法は無いのだろうか?と考える日々。







 ....あっ、今血がドバーって溢れてきた。





 強く抱きしめてる腕をなんとかすり抜けて、布団から脱出に成功すれば、一目散にトイレへと駆け込んだ。




 本当女の身体って厄介だ。人によって月経の期間は様々で、症状も軽度のものから立ち上がる事さえ困難な人も居る。




 私は期間が長くて、出血は多量。腹痛を主にして、貧血で倒れそうになる事もある。






 冷たい便座に座ると蹲り、唸り声を上げた。

 

 暫くそんな状態が続くと、まだ日の光りなんか出てきていない時間帯だというのに、何者かが扉をノックしたのだった。

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