第61話

ヤクザ飯....それは凄まじく私の舌に馴染んで、すっかり虜にさせられた。





「美味すぎ!アンタこんなの毎日食べてるとか羨ましすぎる。」




 指定暴力団山田組の屋敷に、軟禁(居候)する事になった私は、強面ヤクザたちに、若頭である詠斗の恋人として勝手に認定されて、姐さんなんて呼ばれてしまっている。



 

 会社とこの家を往復する日々の唯一の楽しみといえば、ここで食べる食事だけだ。





 大広間で、長テーブルにずらりと並ぶ和食の数々。



 上座に座る詠斗とその横に無理矢理に落ち着く私。




「そうか、もっと食っとけ。カロリー消費すんだから。」




 隣で破廉恥な小言を挟む変態は、仕事中以外の私の時間を独占している。




 すっかり詠斗の身体に愛された身体は、キスマークだらけ。




 エッチはしたいけど、相手がこの男ってなると、嫌がるものの、何だかんだで流される。



 と言うか、気付いたら襲われてて、甘く長いキスは私を蕩けさせて自我を失わせるのだ。






「姐さん御代わりありますんで、どんどん食べてください!そして若頭との跡取りを楽しみに待ってますんで....」





 いよいよ取り返しのつかない発言をするのは、先日私が殴って失神させてしまった天竜さんだ。




 屋敷内でしか関わりがない彼は、私と詠斗の給仕を主にしている。




 実は、この食事の大半を天竜さんが作ってるんだとか....




 ヤクザ辞めて、料理人とかの道に進めばいいのにと思う今日この頃。




「未来の嫁さんよ、組の奴らは赤子を御所望だとよ。」




 わざと耳打ちしてくる変態に、顔を赤らめてしまう私は、大きく咳払いをして無視をかました。





 この男と一緒になるつもりは微塵もないし、ましてや妊娠なんて絶対にしたら終わる。




 次期八代目山田組組長と結婚?ふざけんな。

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