第56話

昨日の突撃騒動並びに、今朝のお盛ん送りは、瞬く間に社内を騒がせる。





 つい先日、寿退社した先輩に続け‼︎‼︎と冷やかされる羽目になるが、みんな相手がヤクザって知らないから....。


 尚且つ、ストーカー男。そんなヤバい男に迫られてます。なんて口が裂けても言えません。





「あの男の影、皆無だった社内のマドンナが遂にか....。」



「私昨日相手の男性見たんですけど、あれはヤバいです。もうお似合い過ぎて....それに、伊丹さん愛され過ぎじゃないですか?そ、その....」




 何故か本人よりも恥ずかしそうに顔を赤らめる同僚(女)は、顔を逸らしながら私の首筋に指を指す。



 あんた昨日、あの三人を見たよね?明らかにそっち系の人だと理解した上で、私の事心配してましたよね!?





 いくら平和ボケしているからと言って、ひとのキスマーク見て“結婚秒読みかも”とか恋愛の話題には敏感だ。






――――勘弁してくれ。こちとら、どうすればあの俺様糞野郎エイトから逃げれるのか模索中なんだから。



 


 












・・・「杏ちゃんヤッホー。」


 

 お昼休憩後、商談室前を通りかかった時、久方振りに感じるセフレ君と遭遇する。



 今日も今日とてチャライケメン。滲み出るチャラ臭が懐かしい。


 彼は詠斗によってつけられたキスマークを見て、萎えさせてしまった一番仲良しなセフレ君。そしてラブホ凸されてエッチはお預け。



 その後会うのは初めてである。




「...け、ケンちゃ~ん。」



 若干の涙目で迫る私は、人目が無いのを良い事に、ケンちゃんこと“私と詠斗の事情”を少なからず知っている人物に話を聞いてもらうべく抱き着いた。

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