第80話
次の日、マリーさんが会社に来ることになり、私はお茶菓子のケーキを買いに外へ出た
ケーキ屋に入ると、可愛らしいクリスマスケーキがいくつも並んでいて、目移りしていた
マリーさんもきっとこういう可愛いのが好きだろう
『すみません、このスノークリスマス4つください』
「すみません、そちらたった今売れてしまって…」
『あ、そうなんですか…』
店員さんに注文すると、目の前のショーケースに入っていた残りの4ピースは一足先に売れてしまったようだ
私の他にショーケースを覗いている人は一人だけ
チラッとその人のことを見た
『…あれ?もしかして』
「?あ!いっちゃん!」
ケーキに夢中で気付かなかったけど、そのケーキを注文していた人はマリーさんだった
「偶然!今からそっちに行こうと思って、この前のお礼にと思ってケーキ買ってたの!」
『お礼なんてそんな…あ、そのケーキは私が買いますから!』
「いーのいーの!この前は大分おごってもらっちゃったし…今度こそちゃんとご馳走するけど、これもあたしにださせて?」
『いやでも…』
「そうじゃないとあたしの気がおさまらないの!」
『じゃあ…お言葉に甘えて。ありがとうございます』
私はやっぱりマリーさんの好みのケーキだったと思ってクスッと笑った
「なぁに?」
『いえ。想像通りだったなぁと思って』
マリーさんと一緒にケーキ屋を出て会社を目指して歩く
華奢で歩き方1つとっても素敵なマリーさんの横を歩くのは申し訳ない
「そういえば、クリスマスは?あいつと過ごせそう?」
『いえ、特に何も言われてませんし。それに忙しそうなので、諦めてます』
「えー?会いたいって言わないの?」
『言えないですよ。そんなこと言ったら無理してでも会いに来てくれるんじゃないかと思ったら…』
「無理させればいいじゃない」
『え?』
「まぁ、いっちゃんの気持ちもわかるけど、時にはいっちゃんの会いたいって気持ちが力になるもんよ」
私の会いたいって気持ちが?
「いっちゃんだって、どれだけ仕事が忙しくてもあいつに会ったら元気になれるって思わない?」
『まぁ…確かに…』
「どんな仕事をしてたって、その気持ちは同じだと思うよ?特にあたしたちみたいな仕事は、自然な自分でいられる人との時間は貴重なのよね」
マリーさんにそう言われて、付き合うと決めたときに冬弥が言っていた言葉を思い出す
何でも言ってほしい
冬弥はそう言っていた
『…迷惑じゃないですかね?』
「好きな人に会いたいって言われたら、いっちゃんは迷惑?」
優しい笑顔に見つめられて、私は首を横に振った
「そりゃあ毎日会いに来いって言われたら嫌になるときもあるかもしれないけど、クリスマスくらいいいんじゃない?素直になっても」
マリーさんのおかげで、少し勇気が出た気がした
ちゃんと会ってプレゼントを渡そう
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