第12話

ペン先についた印


『嘘…』


当たり前と言った表情でスマホをちらつかせる冬弥


「じゃ、約束通り教えて?」


別に恋愛関係になるわけじゃない

ただ友達になるだけ


そんな気持ちでメッセージアカウントを交換する


"Toya"


本当に交換しちゃった


「よし。これでわざわざ満員電車に乗らなくて済む」


『え?』


そうだよ

冬弥くらいの芸能人が電車に乗るわけないよね

あのときはタクシー捕まらなくて電車に乗ったって言ってたし…

じゃあ今日は…


「友梨に会うためにあの時間の電車に乗った。乗った甲斐が会った」



私に会うため?

わざわざ?


「毎日あんな満員電車に乗って大変だな」


サラッと恥ずかしくなるようなこと言うのに全然平気そう


『まぁ…』


「痴漢とか気を付けろよ」


『大丈夫です。こう見えても結構強気なので』


「ふーん。不思議だな」


『何がですか?そんなにおっとりしてるように見えます?』


「違くて。何で彼氏いないの?」


『な、何でって…』


「こうやって話しててもモテそうだし、言い寄る男はいくらでもいるでしょ?」


『いや、そんなことは…』


「謙虚だな」


『冬弥さんこそ…』


私なんかになんで?

周りには可愛くて綺麗な女優、モデル、歌手…いくらでもいるでしょ

やっぱり私騙されてる!


「いるよ。いくらでも」


『は、ははは…』


やっぱり…


「でも」


騙されてる?


「芸能人だからって好きになるわけじゃない」


なのに


騙されてるって思えなくなりそうになる


『わ、私そろそろ帰ります!』


「そ?じゃあ出ようか」


『だ、大丈夫です!ご馳走様でした!』


これ以上あの瞳に見つめられてあんなこと言われたら…



「…可愛いな」

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