第46話

確かに、彼は裸ではない。

下はちゃんとズボンを履いている。

でも上が裸なのだ。

頭からタオルを掛け、乱雑にガシガシ髪を拭きながらリビングに入ってくる。

ふわり、と香るあたしと同じバラの匂い。

これは、あたしのお気に入りのちょっと高めなシャンプーだ。

同じシャンプーを使っただけなのに、何故か胸が少し暖かくなった。


そのままドカッと、ソファーに腰掛けて髪を拭いている。


「洗面台にドライヤー出しておいたでしょ?ちゃんと乾かさないと髪痛むよ?」


(せっかくの痛み知らずの綺麗な髪なのに)


チラりとタオルの隙間からこちらを見ては


「だって、あちぃし、めんどい」


そう言ってまた、タオルでガシガシしだした。



「……もうっ! 朝ご飯のお礼に乾かしてあげるから下に座って?」



そうしてソファーにあたしが座って、足元に天真を呼び、脱衣場から持ってきたドライヤーで濡れた天真の髪を後ろから丁寧に乾かした。

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