第18話

「知りたい?」



涙で濡れた琥珀色の瞳の背後にはの真っ暗な夜空から覗く下弦の月の光。



月の光に照らされた天真を見て、何故だか言いしれない恐怖か不安かもわからない気持ちを感じた。



未だアパートの玄関ドアの前で抱き締められたままのあたし。いちゃついてるわけではない。



「ね、部屋入れてよ?天音。夜に部屋行くって言ったただろ?ちゃんと話そう?」



なんだか、天真の体温が高いような気がする。もしかして外にいたから軽い熱中症にでもなっているのだろうか。部屋に入れるのに全く抵抗が無い訳ではないが、ここで倒れられても困る。遊びのあたし相手に変な気を起こす事もないだろうし、飲み物を出して少し休憩させてついでに話もしとこうか。いつまで続くかわからないが明日以降も大学で待ち伏せされたら困る。


「わかったよ。あたしも話したい」



そうして、あたしは真っ暗な部屋の中に天真を入れた。天真をこの部屋に招くのは初めてだった。

まさか別れてから部屋に元彼を入れるとは思っても

みなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る