第72話

「っ絶対にありえません…っ」


絶対、絶対絶対絶対絶対…、


「だから、俺はそれを確かめるために学校を空ける。あまり期待は出来ないけどな」


「ありえませんありえませんありえませんっ、ミクさんが裏切るわけないっ」


「こっちは今、戦力も落ちてる。ニシヨミに協力を仰いでるが、やっぱり外部の人間だとチームワークってのがちょっとな」


「だってっ、ミクさんは…この学校のことっ、みなさんのことをっ」


「だから今は、出来るだけ穏便に済ませねえといけないってのもあって、」


「あんなに好きだっ」



ガンッ!!!!!!


形容するとそんな音で遮るように、思いっきりテーブルが叩かれた。


上にあった本やカップが激しく跳ね、そのまま床へと落ちて行く。

バサバサッ、ゴトッ、色んな痛々しい音が混ざり合って、あたしはハッと現実に引き戻された。


吃驚した。心臓が飛び出そうなほど、驚いて、吐き気がした。


だけど、あたしは怯んではいけない。


寄せられた眉が、きつく上がった目が、あたしを睨んで、「黙れ」と一言零す。




「…………いいか、聞け」


「…は…い」


「俺は、アイツが裏切ったと、本当は思ってない、思いたくない」


「……」


「だから、この話を他の奴らに聞かせないために外に追い出した」


「っ」


そうか。だから、話を始める前に、泰司さんは全員を部屋から出して、あたしと二人だけの空間を作ったのか。


ただ、大事な話をするためじゃなく、まだ、誰にも、ミクさんを裏切り者として、見てほしくなかったから。

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