第22話

――――マツキタには化け物が揃っている。



ホントにな。


リュウの足を弾いて、近づいてその肩を掴む。








「もう、俺を探すな。頼む」



「っ、」




誰にも聞こえない声で、最後に耳元で言ってやった。


膝がリュウの腹に減り込み、そのまま膝からずるずると崩れ落ちていく。


何かを言っていた気がするけど、俺にそれを聞く権利などない。


こいつのこんな姿、初めて見たかもな。


俺はそれを見下ろしながら、コノエの方へと踵を返した。






「み、く…おま………」



コノエが首を振りながら、声にならない声を上げていた。





「なんで…っ…だって、オマエ…!」



「うるせェよチビ、オマエも寝てろ」




すぐに走って、その間合いに入る。


胸倉を掴み、腹を殴った。


咳込むコノエはそのまま膝を床につける。







「…っぐ、ゴホッ…ぅ、」



「殺されたくなかったら、寝とけ」




その首元を叩きながら、俺は無心でそれを呟いた。



この時の、


コノエの酷く傷ついた目を、



俺は一生忘れないだろう。



いや、忘れてはいけない。




俺の罪滅ぼしは、積もり積もって、


きっと一生、終わらないのだから。


せめて、忘れないでいよう。


自分のしてきたことを。


自分のしてきた、過ちを。






急に、足元が、ぐら、とした。


落ちる、そんな感覚。




俺は、本当に最低で、



最悪な―――、





「三國」



振り返る。




「おかえり」




にっこりと、状況に似合わない真っ白な笑顔を向けられる。



最悪な―――死神だ。


周りを不幸にしか出来ない、災厄だ、俺は。



シキの声に、俺は何も言えずにただ歯を食いしばる。


口の中は、鉄の味がした。

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