エストルアイデ〜空を仰ぐ魔術使い〜

ホノスズメ

第一章 冬の旅

プロローグ


 白いかさをかぶった山林、朝焼ける雪解けの清流のそばで、私はこどもたちを引き連れて小岩に飛び乗った。冷たい岩肌が肉球の感覚を奪っていく。

 けれど私は女王猫、これしきのことでうろたえてはいけない。でもやっぱり辛い!

 案の定風にさらされる前足がプルプル震えてきたが、顔色だけでも威厳を保つ。


「ねえねえ、女王さまちょっと震えてない?」

「やっぱりー」

「女王さま、どうしたの?」

 

 っく、群がる子たちのほうがずっとあったかいじゃない!。

 子供たちをなだめ、ようやく話を始められるころにはほら雪が……寒い。内心でため息をつき、私はわいのわいのさわぐ子供たちへ声を掛けた。


「さ、今日のお話をはじめるわよ」

「「「お願いします!」」」

「っふふ、そうね。これは私の最後の友、あの空の大陸をつくった一人の女の子のお話よ―――」

 

 そう、あの子のお話。たった独りの魔術使い、年老いぬ良き人。

 私は、できる限りの感動を込めてあの子を脳裏に描いた。

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