湯船

 鞄をその辺に放り投げ、俺は自室のベッドに腰掛ける。そのまま靴下を脱ごうとして右足を左の太ももにのせる。一日中上履きの中で熟成された何とも言い難い激臭が鼻をつく。もはや毒だこれ。

 脱いだ靴下を一刻も早く遠ざけたい思いで投げ捨てる。そのままゴミ箱に入った。ナイッシュー。もういいやそこで。

「さっさと風呂入りなー」

 階下から母さんの声。面倒だけど、風呂は後にすればするほど面倒になるしな……。

 適当な下着と着替えを押入れから取り出し、そのまま浴室に向かう。

 折れ戸を開くと思いの外湿度が高い。風呂ふたをクリクリと巻き開けると、浴槽にはしっかりとお湯が張られていた。母さんがためてくれたのか。

 衣類を脱いで丸裸。ざっとシャワーで全身を濡らす。

 頭、顔、体と順番に洗いきる。よし、清めの儀式は済んだ。

 いざ、という思いで湯船に浸かる。わずかにお湯が溢れる。

 今日の学校での出来事を思い出す。そのまま湯船に沈み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る