戦場のラッキープリンセス~VRMMOで一番必要なステータスは、PSでどうにもならないラックだよね!(PSがあるとは言っていない)~
@YA07
第1話 ありがとうおばあちゃん
宝くじで一等を当てたので仕事を辞めた私は、懸賞で当たった最新型のフルダイブVRゲーム機を使って何かゲームでもしようかと考えながら助けた街中のおばあちゃんに大手ゲーム会社が発表した新作VRMMOの五千人限定の先行プレイ権を貰ったのでそのゲームをやってみることにした。
VR技術の発展により栄えた文化の一つとして、VRMMOが挙げられることが多い。
従来のMMORPGは、プレイヤーが好きなようにキャラクターをクリエイトすることを売りにしておきながらも、実際のところゲームの攻略という点においては特定のビルドしか許されないような風潮があった。
しかし、これがVRゲームとなり大きなアクション性が加わったことによって、プレイヤー自身の行動選択が与える影響が非常に大きくなったことにより、本当の意味で自由な育成を楽しむことが可能となったのだ。
キャラクターのビルドに答えはなく、プレイヤーが好きなようにキャラクターを育成でき、ネット掲示板での最強議論なんかもより活発に行われるようになった。
それに加えて、技術革新により膨大なデータを管理することが可能になったのもMMOというジャンルを大流行させるに至った大きな要因の一つだろう。
膨大な種類のモンスターや武器やクエスト、世界に一匹しか現れないモンスターや特定のプレイヤーにのみ与えられるユニークスキルといったデータという意味ではコスパの悪いものを気兼ねなく実装できる環境。また、それらに伴って起こるプレイヤー同士の激しい争奪戦。プレイヤー同士の交流。エトセトラ。
VRMMOというジャンルにとって技術の進歩はどんどん追い風となり、今では巨額の賞金のかかる大会が開かれるようなVRMMOも少なくはないほどに遊戯というジャンルを席巻していた。
前置きはこのくらいにして、早速そのゲームをプレイしてみようと思う。
特にスタートダッシュを決めたいとかそういったこだわりはないが、仕事を辞めて暇なので一応プレイ可能時間の三十分ほど前からVR世界で待機している。
そのゲームの名前は、『Virtual Core Scramble』。VCSとか呼ばれているらしい。
事前情報は全く知らない。そもそもゲームもあまりしたことがない。なんかせっかくもらったしやろうかなくらいのノリでここに来ただけだ。
そもそも、VR空間に来るのが学生以来のことだ。
VR世界は今では第二の世界と呼ばれているくらい人間の生活に結びついているもので、VRに潜る時のアカウントIDも国が管理していたりする。
確か、産まれた後に住民票に紐づく形でVRIDが支給されるんだったか。なので、VRIDの複製は不可能だし、VR空間で何をしているのかは国に筒抜けだったりする。
昔は嫌がる人もいたらしいが、その履歴を元に自分向けのサービスが色々展開されていくので私は便利だと思う。
……と、そんなことを振り返っていたら早速ゲームのプレイ可能時間になったようだ。
私がゲームのタイトルに手をかざすと、タイトルの文字が宙に消えていくという演出と共に大きな扉が現れた。
少しばかりの期待を胸に含ませながら、その扉の中へと足を踏み入れる。
するとすぐさま、機械的な女性声が鳴り響いた。
【Virtual Core Scrambleの世界へようこそ! 新たな挑戦者に感謝と歓迎を示しましょう!】
そんなアナウンスと共に、壮大なファンファーレが鳴り響く。
目の前にはデモ映像が流れており、広大な自然やそこで暮らすモンスターたち、栄えた街中の様子といったものが映し出されていた。
しかし映像を見るだけで感動できるほどこのゲームに対する興味はないので、早速ゲームを開始することにした。
【まずは、貴方の名前を教えてください】
そんなアナウンスと共に、名前を入力するコマンドが現れる。
私は特に迷うこともなく名前を入力し、決定ボタンを押した。
【ゆきひめ様ですね。かしこまりました】
ゆきひめというのは、ほとんど私の本名だ。
春日幸姫。幸に姫と書いてさきと読む。それが私の名前だ。
【それでは次に、種族ガチャを引いていただきます。なお、基本的な種族にはゲームプレイ中に条件を満たして神殿を訪れることで転生することが可能なのでご安心ください。ただし、基本的には全てのプレイヤーが転生の条件を満たすことができるように設定されていますが、性別が条件のものだけは満たせないプレイヤーがいることをご了承ください】
注記事項がやたら長いアナウンスの後、私の目の前に人型のシルエットが五つ現れた。
これに触ればいいのかな?なんて思いながら、一番真ん中のシルエットに手を伸ばす。
するとそのシルエットは青色に輝き、その姿を露わにした。
「えー……猫人族?」
そのシルエットは人の姿に猫の耳としっぽが生えたような姿をしており、何やら種族の特徴やらステータスの配分が説明されているテキストが近くに表示されていたが、正直何を書いてあるのかよくわからなかった。STRてなに?VIT?よくわからん。
さて、どうやらあと四つ引けるらしいが、この感じだと一個一個やってもどうせよくわからない。なので、一気に引いてみることにする。
「ほっ、ほっ、ほっ!」
リズムを刻んで四つのシルエットにテンポよく手をかざす。
すると、一つは白い光を放ち、もう一つはオレンジ色の光を放ち、もう一つは虹色の光を放った。
「おー?」
虹色なんて、どう考えても最高レアだろう。何%かは知らないが、意外と出るらしい。
なんて思った矢先、最後の一つに特殊な演出が入った。
黒いシルエットの周囲に蝶が舞い、ハート形のピンクの波動が幾度と波打つ。
やがてそれが収まると、今度は白色の光を放った。
「え、演出ありの白?」
どう考えても、白は最低レアだ。
どういうわけかとその種族を見てみると、奇妙なことが書かれていた。
「ユニークコモン?」
そんな私の疑問の声にこたえるように、アナウンスが流れる。
【ユニークレアの的中おめでとうございます。ユニークレアとは、初期選択でのみ選べる、転生にてなることのできない種族です】
「ほー」
つまり、この虹色のレジェンドレアというのは転生でなることもできるということか。
しかし、ユニークとはいえコモンだ。きっとユニークレジェンドとかもあるのだろうし、残念感は否めない。
そして肝心の種族だが、レジェンドレアの方は『竜人族』、ユニークコモンの方は『ラッキープリンセス』だった。ラッキープリンセスって私のこと?ていうかラッキープリンセスとかいう概念、種族なのかどうかも怪しいけど。
まあ……でもこんなの一択だよね。
───ちなみに、このレアリティは合計ステータスの総量で振り分けられているもので、ユニークの中ではむしろコモンが一番少ないのでレアなのだが、今のゆきひめがそれを知る由はなかった。
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