給水器

 俺は3枚の円盤を箱の底に固定した。

 魔法の作用点は、魔法陣の真上に配置した同じサイズの円盤だ。

 その手前には濃度の違う3種類の加工魔石を3組配置してダイヤルで選択できるように線を彫っていく。


 台の上部には、同じサイズのフードを作って、そこから外に続くダクトをつなげて、魔法陣を刻んだ送風機を付ければ完成だ。

 

「まさか……これは……」


「厨房内に……カマド?」


「火口が3口ありますからね。鍋でスープを煮込みながら、ケトルでお湯を沸かして、その横で肉も焼けます。」


「そりゃあ、厨房で煮物や焼き物が出来たら助かりますけど、匂いが籠ってしまいます。」


「ご心配なく。このスイッチを押すと、風の魔法が発動して、空気を外に逃がしてくれます。ああ、この辺に照明があった方が、調理しやすいですよね。」


 俺は改造型ライボを追加で取り付けた。


「さあ、試してみてください。」


「くっ、ライア、スープ鍋の準備。アリサは肉を切って。ミアは野菜を切って頂戴。」


「「「はい!」」」


「ああ、忘れてた。これ、給水器です。シャイ王女の発案で、ここに魔力を流すと、この先から水が出てきます。」


「えっ、水は井戸で……」


「これからは、ここからどうぞ。あっ、火魔法を組み合わせれば、お湯も出せそうだな。」


「ふう、やっぱりガルラ様はメイドの味方よね。」


「待ってよ。給水器は私の発案なのよ!」


「ああ、そうか。給水器とセットで洗い場を作ってやれば、食器洗いや野菜を洗うのも全部厨房でできますね。」


「えっ、まさか……」


「この食器庫を移動して、コウスラで洗い桶を作って排水管を外へつなげて……後で、排水溝へ接続しておきますよ。」


「ちゅ、厨房の常識が……」


「ダメよ、このお屋敷だけなんですからね。これを当たり前だと想ったら、他所でメイドが出来なくなるわよ!」


「そんな事はないわ。私が、これを国のスタンダードにするわよ!」


「「「シャイ王女様!」」」


「ふう、勝手にやってくれ。俺は部屋で少し寝るからな。」


「「「ありがとうございました!」」」


 まあ、女性に感謝されるのは悪い気分じゃねえ。

 俺は自分の部屋に戻った。


「で、何でついてくるんだ?」


「パートナーなんだから当然でしょ。」


「あとは、暖房用と冷房用の送風機を作ればいいんだろ。明日にでも作ってやるさ。」


「それだけじゃないわ。どうしたらこれらを量産化できるか考えないと。」


「それは俺の仕事じゃない。商業ギルドのヤツとか、城のスタッフを呼んで考えろ。」


「ねえ、何でガルラは私に冷たいのよ!」


「勘違いするな。単に興味ねえだけだ。」


「だぁかぁらぁ、私、王女だよ。独身だよ。ピチピチの20才だよ。顔だって、人並みには可愛いって言われるんだよ……」


「それがどうした。」


「部屋に二人きりなんだよ!……ちょっとはムラっとかしないわけ?」


「何だ、それは?」


「あれっ?あれれ?もしかして、若い女の子に興味ないの?」


「他人に興味がないだけだ。」


「おっ、おっかしいなー……もしかして、おこちゃま?」


「何だそれは?」


「……しゃ、射精とか……した事……ある?」


「だから、何だそれは?」


「もしかして、未成熟……」


「未成熟だと?」


「オ、オチンチンが、その……堅くなったりしない……の?」


「小便の話しか?」


「……あのね……私も、その、経験はないんだけどね……」


「何のだ?」


「急な婚姻が決まる可能性があるからね……一応、知識だけは教えられてるの……」


「どうした、顔が赤いぞ。」


「ダ、ダメ……、何で私がドキドキしてんのよ……」


「なにが?」


「こ、このお子ちゃまに……性というものを教えてあげるだけなんだから……」


「性?」


「ああーっ、もう。いいから、そこに座って目を閉じて!」


 何だか分からないが、俺は言われたとおりベッドに腰掛けて目を閉じた。

 空気の動きが、王女の接近を感じさせ、隣に座ったのが分かる。

 彼女の息遣いが荒い。


 ふいに、王女の手が俺の手に触れた。

 考えた事もなかったのだが、意外と柔らかい事に驚く。

 その手が、徐々に上へと移動し、首から耳。そして唇に触れた。


 少しの間唇を触っていた指が、下に降りていく。

 そして、王女の顔が近づいてきたのが分かる。

 息が頬にかかり、そして指よりも柔らかいものが微かに唇に触れた。

 震える唇はすぐに離れた…… 

 ハアハアと王女の息が、更に荒くなるのが分かる。


 何故か分からないが、胸がドキドキしてきた……

 王女の唇が、さっきよりも少し長く唇に触れ、また離れる。

 王女の手は、俺の左胸を触っている。


「うふっ、ドキドキしてる……」


 腰の辺りが熱くなってきた……

 目を開けると、真っ赤になって目を潤ませた王女の顔が目の前にあった。

 目を閉じながら王女の顔が近づいてきて、唇が強く押し当てられてくる。

 今度はヌルっと柔らかいものが口の中に入ってきた。

 頭の中が真っ白になって、俺は王女に押し倒された。


 王女の柔らかな胸が俺の胸に押し当てられる。

 王女の足が俺の股間に割り込んでくる。


「これが……男と……女……よ……」


 王女の足が俺の股間を刺激してきて、俺は激しい快感を感じながら股間から何かが出ていくのを感じた。


「あっ……」


 王女は俺のパンツの中に手を入れてきた。

 ヌルヌルしていた。


「これが射精……よ。多分……」


「どうして……」


「こうして気持ちが高ぶって……子供を作るのよ。」


 王女は布で俺の股間をふき取ってくれた。


 俺は体を入れ替えて王女を下にして、唇を強く押し当てた。

 さっきされたように、舌を王女の口の中に入れて強く吸う。

 手で王女の体をまさぐる。

 柔らかな胸を触ると、王女の口からアアッっとあえぎ声が漏れる。


 食事ができたと声がかからなければ、どうなっていたか分からない。


「この事は、誰にも言っちゃダメよ。」


「何で?」


「ホントは、結婚前にこういう事をしちゃいけないのよ。特に私は王族だから、人に知られたら……」


「……分かった。」


 王女に連れられて食堂にいき、食事を済ませた後で、王女は城に戻っていった。

 俺は何をするのもうわの空で、考える事ができなかった。

 頭の仲は、王女の唇や手でいっぱいだった。

 王女の唇の感触を思い出す度に股間が熱くなった。


 翌日、王女がやってきて、城のスタッフであるエリザベスさんと商業ギルドのローズさんとで、給水器と魔道ストーブの量産化について打ち合わせがおこなわれた。

  

「給水器は、見本があればいくらでも模倣できてしまいますね。どうしましょう。」


「私は、普及してくれればいいから、そこは気にしないけど。」


「商業ギルドとしては……、そうですね、マネされるよりも早く普及させればいいので、銀貨2枚くらいで販売しましょうか。」


「そこまで下げられるんですか?」


「ガルラ様、この魔法陣って刻印みたいな形でも作動しますか?」


「えっ?あっ、ああ、大丈夫だと思う……」


「どうしたんですか?具合でも悪いみたいな……大丈夫ですか?」


「ああ、ちょっとボンヤリしてしまって……ゴメン。」


 コウスラで圧縮用の型を作り、柔らかい鉛を使って魔法陣の稼働を確認した。

 給水器は、王女が国王の承認を得て正式に商業ギルドから銀貨2枚で販売される事になった。



【あとがき】

 魔道具の普及

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