そのカード、高額につき

「ショーケースのカードは……ここか」



 ちょっと進んだ先に目的のコーナーを発見。

 パッと見た感じ、前の時よりもすごく品揃えが良いように見える。角矢がやったのかな?


 記憶にある前のと比べても、ショーケースに新しいのが二つ増えてるし、きちんと色分けもできている。

 この店もカードゲームに力を入れ始めてるのが分かるな。


「沢山あるんですね~。あ、見てください。私がいますよ!」

通常版ドラゴン姿でも自認は自分なのね」


 ここでラフラが何かを発見する。指差す先には『光の極竜賢 ラフィール・ラフランカ』のカードが。


 販売年を見るにこれは四度目の再録版のようだな。

 現状最も安価で取り引きされているバージョンで、レート上げに興味の無い層がこぞって買うやつだ。


 通常版ラフラは普通にドラゴンの姿をしているけど、人型のラフラはそれに驚いている様子はない。

 ちょっとした発見である。今は関係ないことだけど。


 それにしても展示されているカードはどれも環境でも見られるような優良カード揃い。

 中々目の保養になるな。流石角矢、良い仕事する。


「よし、じゃあ探すぞ。ラフラ、他のカードとは質感が違って、なおかつテキスト以外の文字が書かれているカードを探してくれ」

「分かりました。では私はこちらのケースを確認しますね」


 感心するのはさておき、二手に分かれてカードを探し始める。


 まず、あいつは金庫の中に自分がいると言っていた。

 それはつまり、ショーケースの中には注釈が書いてあるダミーのカードが展示されているはず。


 売ってるけど実物は別の場所に保管してるってのはそう珍しいことじゃないからな。

 ……まぁイコールで高額カードってことにはなるんだけどな。渋沢一万円を使う覚悟だけはしておくか。


 数分の捜索により、この店の厳重保管カードが判明する。


「展示してるレプリカのカードは四種類か。この内のどれかがあいつだと思う」

「ふむふむ、『獣撃暴乱ランページ・ビースト』、『神央神殿の神座』、『王凰の后クイーン・オブ・バード エンバーニア』、『ストロング・クレイ09』ですか。どれも光り方が他と違いますね」


 見つけたレプリカを見て、思わずほほぉ……と唸りかけた。

 どれも環境レベルの強力カードや必須級パーツだったりと、ずば抜けて需要が高い物が揃っている。


 それら全てシークレット版や大会プロモ。その価値が分かっているじゃないか。

 さぁ、ここから選別タイムになる。俺の審美眼が輝くぜ。


「ラフラはどれだと思う?」

「ええっと、『獣撃暴乱ランページ・ビースト』と『神央神殿の神座』はスペルと設置遺物アビリティ・オブジェクトですよね? あの方は普通に会話していたので、この二枚は違うと思います」


 ほう、中々鋭いな。流石は魔法スペルを極めた竜極賢。

 推測通り、この二枚はファミリアカードではない。ゲームにおける使い切りのカードだ。


 イラストも前者は大柄の獣人が大暴れするシーン、後者は神々しい神殿の中に鎮座する神座というもの。


 あんな偉そうな口調でお喋りしそうな奴は描かれていないな。

 となれば残りは二枚。そして、こっちの検討も付いている。


「もし意志を持つカードがファミリアに限定されるとしたら、候補は二枚になる。そして俺の予想は──」


 数歩歩いて、俺はとあるショーケースの前に立つ。

 少し上を向いてやると、そこには一際目立つ特殊なカード枠で彩られたカードがあった。


 活発そうなオレンジ髪のツインテール、赤いドレスと炎を身に纏い、周囲に数多くの火の鳥を従える少女。


 正直ラフラにも負けず劣らずのイラストアド。実は俺も現物は初めて目にする。


「このカードですか……」

「ああ、『王凰の后クイーン・オブ・バード エンバーニア』。これがあいつだと思うんだ」


 俺の予想はこれ。二年くらい前の25周年記念特殊パックに封入されていたシークレット仕様のファミリア。


 ちなみにパック発売からの数ヶ月間の環境をコイツ一色に染め上げたカードとしても恐ろしいやつである。

 そして、何故俺がこっちを選んだのかと言うと──


「あいつは自分の眷属を店に放っていただろ? そしてその眷属は鳥。エンバーニアはフレイムバードっていう種族で、ファミスピでは鳥の女王って話だ」

「あ、そういうことですか。片方の『ストロング・クレイ09』はロボットですしね」

「正確に言えば巨人のサイボーグだけど、まぁそんなところ。鳥とは一切関係ないからな」


 もう片方の候補『スト0』に鳥要素は欠片もない。フレーバー的にも、能力的にもだ。


 つまるところ鳥が関係していて、お嬢様っぽくて、生物ファミリア判定なのがエンバーニアだけってわけ。


「すごい! 流石シュージさん、カードにお詳しい」

「ふふふ、そう褒めるな。ただの趣味だぞ。それに……喜ぶにはどうにも早すぎるみたいだしな」


 分かりやすいヨイショに少し気を良くしつつ、発見したカードを改めてよく見る。


 推定本体となるカードを探し出したのはいい。だが見つけただけでは問題の解決にはならない。


 それはどういうことかと言うと、つまり──



「エンバーニア、一枚62000円……か。うーん、買うの無理っ」



 資金面の問題が発生しているからだ。











お読みいただきありがとうございます。


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