この世界、おかしい?(仮)

小阪ノリタカ

第1話 なんだか、おかしいな

なんだか暖かくて気持ちいい…ムニャムニャ…


「ハッ!寝てたぁ…ん?え?座席…電車の中…?」

家の寝室のお布団で寝ていたはず…なのに、私は電車の座席で寝ていた。そして、誰かが掛けてくれたであろう掛け布団。

座席は柔らかくて、暖かい。座り心地もいいけど、寝心地もいい。まあ、本来の使い方ではないけど。


カラダを起こして、車内を見渡すが他の客はおろか乗務員も見当たらない。

「自動運転?なのか?この電車」

とりあえず、車内を散策する。私以外は誰もいないはずなのに、長い編成。数えたワケじゃないから、ざっくりだけどだいたい「20両」くらいの編成。

そして、トイレと自販機完備が各車両に付いている。これでもし、乗車中にトイレに行きたくなっても、いちいち途中の駅で降りなくて済む。


ところで、私に毛布を掛けてくれたのは誰なんだろう?端から端の車両まで歩いたけど、無人のようだし、ロボットとか?

ロボットが毛布を持ってきて、静かに掛けてくれたとか。そうだとしたら、ちょっと怖い。


止まる気配のない電車。外の様子を確認しようにも窓ガラスのところに板のようなモノで貼られて隠されているので、今が昼間なのか夜なのか分からない。

私の感覚(体内時計)ではおそらく昼間のはず…ポケットに入っていたスマートフォンの時計で確認しようとするも何故か文字化けを起こしていて、正確な時間が分からない。



キキーッ!

突然、電車が急ブレーキを掛けて停車。急停車したからか分からないが、窓に貼り付けられていた板が弾みで剥がれて落下。

外の様子がここでようやく分かった。


空は晴れていて昼間みたいなのに、何故か地上は暗くて、まるで夜みたいな雰囲気。

周りの建物も昭和から平成初期くらいの漫画に出てきそうなちょっと古くさいアパートとかが建ち並ぶ。


変なところだな~と思うが、その町にも人がいる気配がない。車内にも誰も人がいないし、外も人がいない。

でも、アパートのベランダには洗濯物が干してあったりとそれなりの生活感はあるので、誰ひとりいないというワケではなさそう。


止まっていた電車が再び、動き出す。

踏切を通過したときに数台の車を見かけたが、かなりのスピードで駆け抜けたので、人が運転しているか確認出来なかった。


「もしかして、私が見えない・聞こえないだけで実は人が居る?」

とも思った。

実は、車内に他のお客さんが居て、運転士・車掌といった乗務員もちゃんと居た。ただ、何らかの理由で私からは見えて・聞こえていなかった。寝ている私に毛布を掛けてくれたのもちゃんと「人」だった…のかもしれない。

けど、それは私から見えない・聞こえないので確認のしようがない。だから無理だ。


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