隣の家に住む学年1の清楚系美少女に素敵な遊びを教えたら家によく来るようになった

柊なのは

1章 素敵な遊びを教えたら懐かれた

第1話 放課後

 興味はない。そう思っていたのに気付いたときには惹かれていた。


 俺、飛鷹秀ひだかしゅうのクラスには清楚系美少女がいる。彼女の名前は豊川千夜とよかわちや。成績優秀、スポーツ万能。何もかも完璧にこなす彼女の周りにはいつも人がいた。


 そんな彼女は男女共に人気者だ。よく告白されるらしいが、全て断っているらしい。彼氏がいるから告白を断っているのではないかと噂もあるが、実際のところどうなのかわからない。



「なぁ、豊川さん。今日も可愛いよな」

「だな。告白してみようかな」

「いや、ムリだろ。告白されても断ってるって聞いたし、振られる未来しかみえない」

「あ~、やっぱそうだよなぁ~」



 近くから男子同士のそんな会話が聞こえてきて、俺はクラスメイトと話す豊川の姿をチラッと見た。


 豊川は天使のような笑顔でクラスメイトと楽しそうに話してる。けど、俺には彼女のその笑顔が無理に作られているように見えた。


 机に突っ伏しながらじっーと見ていると目の前に座る友人、矢部宗也やべそうやが話しかけてきた。


「秀、豊川さんのこと見てるけど、もしかしてついに好きになったりして……」

「なってない。少し気になっただけだから」

「ほんとかなぁ」


 本当だ。確かに豊川はスタイル抜群で可愛いし、付き合えたらいいなとは思うが、俺みたいなやつとは無理だろう。


 彼女のことは苦手でもなく、嫌いでもない。が、なぜかここ最近気になる。それは多分、以前の俺の姿が豊川と似ていることに気づいたから。


「秀は彼女いらない感じか?」

「恋愛に興味ない。欲しいのは安心して過ごせる環境」

「それ口癖だよな」


 安心して過ごせる環境が楽して手に入るとは思っていない。けれど、俺はできるだけ面倒なことには巻き込まれたくないし、めんどくさいことはしたくない。


 机に突っ伏しているとだんだん眠くなってきて、休み時間が後数分あることを確認して寝ようと思ったが、肩をトントンと誰かに叩かれた。


 宗也だろうと思い、顔を上げるとそこにはなぜか豊川がいた。


 寝ぼけて幻覚でも見てるのだろうかと思いつつ目の前にいる豊川をじっと見る。


 さらさらな髪に綺麗な睫毛、一言と言えば美しい。皆が彼女に見とれてしまう理由が今、初めてわかった気がする。


「おーい、秀。豊川さんが話したいことあるらしいぞ」

「えっ……?」


 横を向くとそこには宗也がいて、今、目の前にいる豊川は幻覚でないことに気付いた。


 彼女と目が合うと豊川はニコリと微笑む……なんてことはせずじっと俺のことを見て、口を開いた。


「友人との会話中、すみません。飛鷹くんに渡したいものがありまして」

「俺に?」


 後になってめんどくさいことが起こりそうな予感しかしない。クラスメイトからの視線が今ここに集まっている気がする。


 クラスでこっそりと過ごすことを決めているんだが……今、とても目立ちまくってる。


「はい、飛鷹くんに。ですので……」


 そう言って彼女は小さなメモを俺に手渡した。何が書かれてあるのか見るため俺はそれを受け取った。


 受け取ったのを確認すると豊川は何も言わず、自分の席へと戻っていく。


(何だろう……)


 メモは折られており、広げるとそこには『放課後、付き合ってください』と書かれていた。


 なぜ俺なのかという疑問はなく、俺は今日もかと少し楽しみな気持ちになっていた。


「秀、何が書かれていたんだ?」

「……秘密。宗谷、今日は放課後に予定があるから一緒に帰れない」

「おう……急用か?」

「あぁ……。寄り道はまた今度で」


 周りに聞こえないようメモを渡してくれたのはいいが、クラスで目立ってしまった。これは連絡先の交換が必要なのかもしれない。会ったら交換しないかと聞いてみよう。



***



 放課後。教室に人が少なくなり、豊川がいないことを確認してから俺は1人で教室を出て、ある場所に向かった。


 あまり人が行き来しない南校舎の3階、階段前。そこに行くと壁にもたれかかって、本を読んでいる豊川の姿があった。


「お待たせ」


 集中しているので来ていることに気付いていない様子だったので声をかけると彼女は本から顔を上げて、ぱぁーと顔を明るくさせた。


 本をカバンに入れると彼女は俺のところに来て両手を握ってきた。


「飛鷹くん」

「豊川、誰も来ないところだけど、距離が近すぎるぞ……」

「そうでしょうか? 私、楽しみで楽しみで飛鷹くんに会えるこの放課後が楽しみで仕方なかったんですよ?」

「お、おう……そうなのか……」


 俺を目の前にすると豊川はいつもこうなる。しっかり者の姿はどこへ?と思うほど彼女はゆるゆるになり、少しスキンシップ多めとなる。こちらが素であるらしく、学校とは全く違う雰囲気だ。


「そうだ、豊川。メモで渡すのはいいが、これからはメッセージにしないか?」

「メッセージ……つ、つまり、連絡の交換をしようということですね。是非しましょう!」


 俺からバッと離れるなり、スマホをカバンから取り出す彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。


 連絡先の交換をすると千夜と名前が表示され、追加のボタンを押した。すると、豊川は俺の下の名前を呼んだ。


「秀……」


「呼んだか?」


「いっ、いえ、いつも飛鷹くんとお呼びしているので少し不思議な感じがして」


 そう言って豊川は少し顔を赤らめて、髪の毛を触る。


「……そ、そうか……ところで、今からどこか行く予定があるのか? 付き合ってほしいってメモに書かれてあったけど」


「……どこかへ行きたいわけではないのですが、今日も私に素敵な遊びを教えて欲しいのです」


 うるっとした目をしながら豊川は両手を合わせてお願いする。


「ん……じゃあ、今日は俺の家にしよう」


「はい。では、私は家に一度荷物を置いてから飛鷹くんの家に行きますね」


「わかった。家の鍵開けておくよ」



***



 誰も知らないし、友達にも教えていないことだが俺と豊川は家が隣同士だ。お互い一人暮らしで彼女が家に来るのは今日が初めてではない。


 マンションに着き、豊川と一旦別れてから数分後。彼女は俺の家へとやって来た。家に帰ったタイミングで着替えたのか彼女は制服ではなく私服を着ていた。


「お茶で良かったか?」

「はい、ご丁寧にありがとうございます」


 お茶を出すとソファに座る豊川はコップを受け取り、「いただきます」と言ってから一口飲む。


「豊川が来るまでに用意はしたからさっそくやろうか」


 俺がそう言うと彼女はコップを目の前にあるテーブルにゆっくりと置き、こちらへ体を向けた。


「はい。では、今日も私に素敵な遊びを教えてください」

 






★久しぶりの安定した(書き慣れている)ラブコメです。よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の家に住む学年1の清楚系美少女に素敵な遊びを教えたら家によく来るようになった 柊なのは @aoihoshi310

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画