第67話

ディアンヌも話しつつも本当の夫婦になる、という意味を考えて恥ずかしくて堪らなくなっていた。

リュドヴィックは淡々としていてクールな印象だったのに、意外にも男らしくストレートに気持ちを伝えてくる。

けれど、彼に近づけたような気がして嬉しかった。



次の日、リュドヴィックとピーターと共に城へと向かう。

ロウナリー国王や王妃に、ディアンヌとピーターを改めて紹介してくれた。

ピーターも共に夕食をしたのだが講師たちの指導を嫌がらなくなり、たどたどしくはあるがテーブルマナーや挨拶を取得していた。

ディアンヌとピーターはここ数カ月でグンと成長している。


リュドヴィックのディアンヌへの様子を見たロウナリー国王は空いた口が塞がらないと言った様子だった。

ロウナリー国王の一言をきっかけに結婚したディアンヌとリュドヴィックだったが、今は本物の恋人のようになっている。

むしろディアンヌの方が、彼の勢いについていけずにいる。


夕食の後、ロウナリー国王はリュドヴィックと話をしている間に、ピーターとディアンヌは王妃の大きくなったお腹を触らせてもらっていた。

たまにお腹をキックして動く赤ちゃんにピーターは興味深々だ。



「ほ、本当にお腹の中に赤ちゃんがいるの?」


「ふふっ、そうよ?」



ピーターは目を輝かせている。

もうあと一カ月もしない間に生まれてくるそうだ。



「ボクもこうやってお母さんから生まれたの?」



ピーターの言葉に王妃は「そうね」と、ゆっくりと頷いた。

ディアンヌもお腹を撫でさせてもらいながら、王妃と談笑していた。

四兄弟の面倒を見てきたため、懐かしい気持ちになる。

すると、ピーターはディアンヌとリュドヴィックを交互に見つめながら予想外の言葉を口にする。



「ディアンヌとリュドは、いつ赤ちゃんができるの?」


「「……!」」


「そしたらボクも面倒をみるよ!」



子ども故の無垢な言葉にロウナリー国王と話していたリュドヴィックは動きを止めた。

王妃は優しく微笑んでおり、ロウナリー国王もリュドヴィックを見ながらニヤニヤしている。

リュドヴィックはロウナリー国王を睨みつけつつも「いつか弟か妹ができたらいいな」と言ってピーターの頭を撫でている。

ディアンヌは顔を真っ赤にしながら、ブンブンと首を縦に動かしながら頷くことしかできなかった。



そしてパーティーまで二週間と迫った日のことだった。

ディアンヌは講師たちと共に本番までの仕上げをしていた。

厳しい講師たちもディアンヌの努力を多少は評価してくれているようだ。

そしてディアンヌの熱意に応えるようにビシビシと指導をしてくるている。


ピーターもディアンヌの真似をしてか、かなりマナーを身につけたようだ。

息抜きは必要だと思い、休憩には思いきり遊んで、朝から晩までびっちりと学んでを繰り返していた。

夜はララやマリアの力を借りながら、見た目にも気を遣うようになった。

今では髪も艶があり滑らかな指通りになり、カサカサだった肌もふっくらとしている。

毎日、筋肉痛になりながら過ごしていたディアンヌだったが、朝起きるとララがいつもより機嫌がよさそうにしている。



「おはようございます、ディアンヌ様」


「……おはよう、ララ。今日は何時からだったかしら」


「大丈夫です。まだ講師の方たちがくるまで時間はありますよ」



ディアンヌは紅茶のカップを持ち上げだ。

首を傾げていると、壁に美しく豪華なドレスが掛かっていることに気づく。

水色の光沢のある生地は、ディアンヌが見ても明らかに高級だとわかる。

銀色の刺繍、腰あたりにはフリルがついていて妖精の羽のようだ。

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