第44話
マリアは何故か嬉しそうにしつつも、ディアンヌの身支度を済ませてくれた。
リュドヴィックも身なりを整えるためなのか、部屋を出て行ってしまう。
ディアンヌは緊張から強張っていた体から力を抜いた。
椅子の上で放心状態になるディアンヌを見てマリアが驚いている。
ディアンヌはマリアにあったことを話していく。
「まぁ……積極的ですのね!」
「寝ぼけていたの! まさかリュドヴィック様を弟と間違えて抱きついてしまうなんて」
「ふふっ、大丈夫だと思いますよ!」
朝から色気たっぷりのリュドヴィックの姿を思い出して、ディアンヌは大きく首を横に振る。
マリアから「髪を結っているので動かないでください!」と、怒られつつもディアンヌは自分を落ち着かせていた。
(……ま、間違えただけで、わざとじゃないもの。リュドヴィック様だってわかってくださるわ!)
このドキドキは後悔なのだと言い聞かせる。
それから軽食を食べてメリーティー男爵領へと向かう馬車に乗り込んだ。
ほとんどが移動になってしまうので荷物は少ないが、公爵家の馬車は広くて快適だ。
ピーターは先に馬車に乗っていた。
ディアンヌの姿を見ると、ピーターは窓から身を乗り出して大きく手を振っている。
二人でリュドヴィックが来るのを待っていた。
「待たせてすまない」
「リュド、遅いよ!」
「……!」
リュドヴィックと視線が合ったディアンヌは思わず視線を逸らしてしまう。
馬車の中でもリュドヴィックと視線を合わせることができずにいた。
ディアンヌはピーターと馬車の外を眺めながら過ごす。
リュドヴィックがうとうとして眠そうなのを目撃して考えてしまう。
(昨日はあまり眠れなかったのかしら……もしかして、わたしの寝相が悪かったとか!?)
リュドヴィックは眠ったり起きたりを繰り返していた。
一日の移動を終えて、あっという間にメリーティー男爵領へと到着する。
ずっと馬車に揺られていたからか、体が軋むように痛む。
馬の方が楽なのではないかと思ってしまう。
馬車から降りようとすると、リュドヴィックがエスコートするように手を伸ばしてくれた。
ディアンヌは本物のエスコートに感動してしまう。
(リュドヴィック様、王子様みたい……!)
学園で習ったことを生かさなければと思いつつ、お礼を言いながらリュドヴィックの大きな手のひらを掴む。
「ありがとうございます、リュドヴィック様」
「……!」
ヘラリと笑ったディアンヌにリュドヴィックはパッと顔を背けてしまう。
(何か粗相があったかしら……)
ディアンヌが考えていると、遠くから聞き覚えのある元気な声。
「「「姉上……!」」」
「……ライ、ルイ、レイ!」
三人はディアンヌに思いきり抱きついた。
後ろに倒れてしまいそうな勢いに、隣にいたピーターは驚いている。
「ベルトルテ公爵、よ、よっ、よくお越しくだしゃいました!」
「こちらこそ急にすまない」
「とんでもございましぇん! ごゆっくりしていってくださいませぇっ!」
九十度に腰を曲げて、緊張して噛みまくっている父。
母とロアンも丁寧に腰を折る。
ディアンヌは三つ子と共に両親とロアンとも抱き合って挨拶をしていた。
緊張しすぎて小刻みに震えている父とリュドヴィックが話している間、ライたちがディアンヌに抱っこをしてくれとせがんでいる。
その姿を見ていたピーターがディアンヌを守る様に両手を広げた。
「ディアンヌはボクのだぞ!」
そんなピーターの声にロイ、ルイ、レイたちもムッとしている。
「姉上は、ぼくたちの姉上なんだぞ!」
「そうだ、そうだっ」
「お前だけのもんじゃないんだからな」
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