第12話 妖魔帝国城


――――長旅を終え、私たちは遂にたどり着いた。妖魔帝国の中枢・妖魔帝国城に。


町並みはやっぱりザ・中華である。しかしながら月亮と違うのは、やはり種族色。月亮では人間は魔族のように色々な種系はなかった。民族ならたくさん枝分かれしていたから、服装や装飾品などに特徴があった。こちらではそれプラス、種系よね。前世で言う獣人のようなけものフレンズ耳しっぽだとか、角が生えていたり、羽が生えていたり。下半身が4本脚の獣風だったり、いわゆるリザードマンのような種系も見られる。まぁ、リザードマンと言う呼称ではなかろうが、分かりやすいたとえとなるとそれでしょうね。


「スイ」

物珍しげに馬車の小窓の外を覗いていれば、飛雲が呼んでくる。


「……飛雲フェイユン?」

飛雲を振り返り、改めて思う。

遂に私……輿入れするのね。妖魔帝に……。まぁ、本人は目の前にいるわけだが。


「城に着いたら、到着の挨拶を后がする予定になっている」

「分かったわ。この妖魔帝国に嫁いで最初の挨拶だもの。しっかりとこなすわ」

皇帝としてのこのひとは、果たしてどんな姿を見せてくれるのだろうか。やはり噂通りの恐いイメージ?いや、お父さまの月亮皇としての顔のように、為政者の姿だろうか。


「あぁ。それと……」

ずっと気になっていた。

飛雲が朝馬車に乗り込んだ時から傍らに置いている箱は……何なのだろう?


「スイのために用意した。挨拶の時はこれを着てきてくれ」

「あなたいつの間に……でも、ありがとう。中身、見てもいい?」

謁見用の服を用意してくれるだなんて。だが確かに旅装のままご挨拶とはいかないわね。


それは……赤い……まるで婚礼衣装みたいね。でも……多分これは、飛雲を象徴するような赤だからこそ、私に着て欲しいって贈ってくれたのね。

そんなところも、相変わらずかわいいんだから。


「城に着いたら、暫しお別れだ。控え室があるから、そこで着替え、私に会いに来てくれ」

「うん」

何だかちょっと離れるだけでも、少し寂しい。この旅ですっかり、あなたが隣にいるのが普通になっちゃったんだもの。


そうして城に着けば、妖魔帝や許可のあるものしか出入りできない門に入り、私たちは馬車を降りる。


「お帰りなさいませ、陛下」

出迎えてくれた妖魔族の男は……下半身が蛇の妖魔族だ。


「今帰った」

飛雲が短く答える。そして下半身が蛇の妖魔族が、私を見る。すると飛雲が。


「私の……嫁だ!」

「……知ってます」

そりゃそうだーっ!私を迎えに行っていたのだから。


「月絲怡公主もようこそ。妖魔帝国宰相のツァイリンと申します。早速控えの間に案内いたします」

さ、宰相さま!そっか……確かに妖魔帝国の宰相さまは蛇の妖魔族だと聞いたことがある。


「えぇ、分かりました。そりじゃぁ飛雲、また後で……」

と、範葉と共に行こうとしたのだが。


ぴっ。


私の衣の袂をきゅっと引っ張る飛雲。いや、ちょ……何そのかわいい行動~~っ!かわいすぎるんだけど!うぅ……どうしようかしら。妖魔帝としては我慢して欲しいところだけど……でも。


私が悩んでいた、その時。


ぺしっ。


さ……宰相さまが飛雲の手を容赦なく叩き落とした~~っ!?


「予定が押しているので、あなたも早く謁見用の装束に着替えるように。いいですね」

ひぃ~~っ!?地角以上のドSじゃないの!


そしてアンタも失笑してんじゃないわよ、地角!!アンタも飛雲の側近でしょうが!んもぅ、見かねたマオピーがもふもふセラピーしてくれてるからいいけど……!


うぅ……城の侍女たちに控えの間まで案内されるものの……お面の向こうから覗く寂しげな目は……いたたまれないわ……っ!


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