ブログに載せているお話

エミリー

[飴玉]

 小さな女の子は、何か良いことがあったときや、頑張ったときに、お母さんから飴玉をもらいます。例えば、学校の小テストで良い点数を取ったり、先生やお母さんを手伝ったりします。赤いイチゴ味、オレンジ色のみかん味、むらさき色のぶどう味など、カラフルで美味しい飴玉です。


 女の子は飴玉をもらうために、一生懸命に家のお手伝いや学校での活動を頑張っています。ある日の土曜日、学校はお休みです。学校がない土曜日と日曜日には、家のお手伝いをして、お母さんからあの美味しい飴玉をもらいます。


 お昼ご飯を食べ終わり、今は食器を洗うお手伝いをしています。きちんと泡立てたスポンジでキュッキュッと食器を洗っていきます。


「あと少しで洗い終わるわ! 今日の飴は何味だろう?」


 後少しで飴玉が食べられると思うと、気持ちが急いていきます。すると……。


 カシャーンッ! パリンッ。


 最後のお皿を手に持っているとき、思わず落として割ってしまいました。


 女の子の目には、みるみる涙があふれてきました。


「ど、どうしよう……。お皿を割ってしまったわ! 今日は悪い子だから、飴玉はもらえないわ……」


 美味しい飴玉をもらうために家のお手伝いを始めましたが、小さなことでも手伝えば、お母さんはにっこり笑って女の子を褒めてくれます。そしてその後、飴玉を女の子にあげていました。


 今では、家でのお手伝いでは、飴玉をもらうよりもお母さんににっこり笑って喜んでほしくて頑張っています。


「あぁ、これじゃあお母さんはすごくガッカリしてしまうわ」


 呆然と割れてしまったお皿を見つめ続けます。いくら見つめても、割れたお皿は元には戻りません。


「ただいま〜」


 女の子がどうしようと悩んでいる間に、買い物から戻ったお母さんが入ってきました。


「あら、どうしたの? そんなに涙をためて!」


 お母さんは娘の様子にすぐに気がつきました。


「お母さん……。わたし、私! お皿を割っちゃった悪い子よ。今日はいい子じゃないから飴玉はもらえないわ」


 うつむいて泣きながら、女の子はお皿を割ってしまったことを正直にお母さんに伝えました。あぁ、ガッカリさせてしまったなと思いながら。


「まあ! 大変、怪我はない?」


 お母さんは女の子を叱ることなく、怪我がないか心配しました。


「私は大丈夫よ。でも、最後に洗っていたお皿を割っちゃったの! 今日は私は悪い子だから、飴玉はもらえないわ」


「あなたに怪我がなくてよかったわ。お皿なんてまた買えばいいのよ! それより、手を洗って?」


 優しくお母さんが言います。女の子は不思議に思いながらも言われた通りに手を洗います。


「洗ったよ?」


 女の子は不思議にそうに洗った手をお母さんに見せました。


「そう。それじゃあ、手のひらをお皿のように合わせてみて?」


 女の子はまた不思議そうに、お母さんの言う通りに手のひらを合わせました。


「できたよ!」


「よくできました。そんなあなたには、これをあげましょう!」


 お母さんは鞄からカラフルな飴玉が入った瓶を取り出し、その1つを女の子の手のひらにのせました。ピンク色の桃味の飴玉です。


「え?」


「ふふっ。これはお皿を割ってしまったことを正直に話してくれたいい子へのご褒美よ。隠さずにちゃんと教えてくれて、えらいわね!」


 お母さんは優しく女の子の頭を撫でました。


「そしてもうひとつ。これは今日もお手伝いしてくれて、ありがとう! の分よ」


 そう言ってお母さんはもう1粒、薄黄色のりんご味の飴玉を渡しました。


「ありがとう! お母さん!」




 さっきまで泣いていた女の子の顔にはもう涙はなく、にっこり笑顔の花が咲きました。

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