夜のドライブ
コヒゲ
夜のドライブ
車の心地良い振動を受けながら、俺とジョシュは真夜中の森をドライブしている。
[この森、初めて通るが大丈夫か?]
俺は少し不安げにジョッシュに尋ねる。
[あぁ、そうか。お前はこの森初めてだったか]
ジョッシュが面白そうに言う。
[何にやけてんだよ。それにお前この森来たことあったのか、なら安心だ]
[実はなぁ、そうでもないんだ]
ジョッシュが声を低くして言う。
[なんだよ、俺をビビらせようってか?]
ジョッシュは俺の質問を無視して話し始める。
「昔、ていっても7年前くらいかな。この森で、巨大な虫を見たって話しがあったんだ」
「虫だって?そりゃあ、デカいのくらいいるだろ」
俺は、昔台所に出た、どデカいゴキブリを思い浮かべる。
「デカいってのが、ヘラクレスオオカブトとかそういうサイズじゃなくて、最早豹ぐらいの大きさだっていうんだよ」
「そいつは凄いな。で、それがここが安心できない理由だって?もし何か起きたとしても、それはZ級ホラー映画だよ」
俺が馬鹿にしながら言うとジョッシュは落ち着けと言わんばかりに片手で俺を宥める。
「話はこれからだ。でな、そのどデカい虫がホントにいるか確かめに、デヴィッド達とこの森の奥深くに調べに行った時があるんだよ」
デヴィッドという名前が出た時、俺の脳が2ヶ月前のことを思い出す。
デヴィッド・ブーズ、俺とジョッシュが働いているハンバーガー屋の先輩だった男だ。
そして、3ヶ月前に行方不明になっており、2ヶ月前に惨殺遺体となって、下水道で警察に発見された男でもある。
「デヴィッドと...待ってくれ、もしかして3ヶ月前か?」
デヴィッドは愉快そうに「あぁ、そのとおり」と、まるで助手が自分のの言いたいことを理解して喜ぶ探偵のように言う。
「何で笑ってるんだよ!お前...」
俺はジョッシュに少し悪寒を覚えながら尋ねる。
「いやぁ、その理由を言うためには、あの時に何が起こったかを説明する必要があるな」
ジョッシュは再び、ホラー映画の語り手の様に声を低めて話始める。
「3ヶ月前...確か、5月の頃、俺とデヴィッド、ポール、デンとこの森に、いわば肝試しに来てたんだ」
ポールとデンには聞き覚えがないため、きっとジョッシュの友達だろう。
「ポールが中古のプリウスを出して4人で森に行き、懐中電灯だけ持って森の中に入って行ったんだ」
「懐中電灯?それだけ?」
「酒を飲んでベロンベロンの時に勢いで行ったから準備とかしてなかったんだよ。それで、森に入ってしばらくたってからな、ある、石で出来た遺跡を見つけたんだよ」
遺跡...この辺りにそんなものがあったなんて聞いたことない。もし遺跡があったとしたらもっと話題にになるに違い。
「それでな、俺達はその遺跡を4人で調べてみたんだよ。これは大発見だ~!て言いながらな。その時、ガサッて物音がしてよぉ、でも4人とも遺跡の上に乗ってるからそんな音鳴らねぇはずなんだよ...で、俺達は正体を確かめようとして、物音がした方に懐中電灯の光を向けたんだ。すると...そこには何も居やしなかったんだ」
話に聞き入っていた俺は、胸をなでおろす。
「すると!」
しかしその後の大声にビクッとなる。
「デンの後ろにいつの間にか、何か羽ばたくものがいたんだよ。そしてその羽ばたくものは何か針のようなものをデンの頭にブスッと刺しやがったんだ。その後デンは糸がプツリ切れたかのように倒れこみやがった」
「倒れ込んだって...それにその羽ばたくものって」
「だから落ち着け、最後までちゃんと話すから」
ジョッシュはお道化ながら言う。
「ヤバいと思った俺達は、デンを置いて必死に車まで走ったんだ。必死の思いで走ったからかその時の記憶は曖昧なんだが、とにかく車まで着いたんだよ。それで車に乗って俺達は森から逃げたんだ」
ジョッシュは話を終わらせる。
「はぁ...で、それがどうしたんだよ。それが本当だとして、デヴィッドと何の関係もないじゃないか。後、警察にデン...?て奴の行方不明届とか出さなかったのか?」
俺はジョッシュに訊くが、ジョッシュは返事を返さない。
「おい...ジョッシュ?どうしたんだ...ジョッシュっ、ジョ...ジョッシュ!前っ、前見ろ!」
ジョッシュは虚を見ながら右に曲がらないといけないのにただまっすぐ車を走らせる。
「ちょっ...おま...お前聞けって、き...]
その時、フロントガラスに木の枝が突っ込んできたところで俺の意識が飛んだ。
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