語られのセリヴェルド

紙倉ゆうた

創世記

 太初はじめ虚空こくうあり。


 名も無き星々、ただ静寂しじまの内にまたたくのみ。


 そこに命なく、意思こころなく、物語もなし。


 悠久の時巡り、移ろいの時来り。


 光の星セラエノにいまし、光の女神セリアーザ。


 闇の星ヒヤデスに坐し、闇の神メーヴェルド。


 不老にして不滅なる神々、無限の余暇よかき、虚空に大いなるたわむれ画策しき。


「我ら、ここに新しき星を創造す。星の表面を海に覆ひ、豊かなる大地をはぐくまむ。光と闇の種族を住まはせ、数多あまたの物語つむがせむ。いざ、戯れの始まりなり」


 セリアーザ、光の書を紐解ひもとき、無尽の言霊を解き放てり。


 メーヴェルド、闇の書を紐解き、無尽の言霊を解き放てり。


 解き放たれし言霊、混ざり合い、り固まり、虚空に新たなる星産み落としき。


 神々、この星に己々おのおのが名の一部を与え──


 ──地の星セリヴェルドと名付けき。


 ~聖典 第1章 創世記より~

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